東京高等裁判所 昭和29年(う)355号 判決
被告人 宮内元春 外
〔抄 録〕
被告人宮内元春弁護人A控訴趣意第三点について。
原判決がその擬律の点において、被告人宮内元春、同山本総一の判示第一の所為中饗応の点は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号刑法第六十条、事前選挙運動の点は公職選挙法第二百三十九条第一号第百二十九条刑法第六十条に該当し、右両行為は一箇の行為で数箇の罪名に触れる場合に該当するので、刑法第五十四条第一項前段刑法施行法第三条第三項刑法第十条により重き饗応の行為の刑に従い、所定刑中各罰金刑を選択すると記載したことは所論のとおりである。しかし刑法第五十四条第一項前段の場合にその最も重き刑を定めるに当り、その数罪がいずれも単独刑を規定しているときは、それが同種のものであつても、異種のものであつても、刑法第十条の規定するところによつてその刑の軽重を対照決定し得るのであるが、もし併科刑又は選択刑を規定しているときは、その刑の軽重を定めるについて刑法施行法第三条第三項の規定の適用をも必要とするのである。けだし同条項は併科刑又は選択刑のある場合に刑の軽重を定めるための対照手続を規定したものであつて、その表現は広く一般的であつて特に新旧刑法の刑の対照のみに限定したものではないからである。(最高裁判所第一小法廷昭和二十三年四月十八日判決、判例集二巻四号三〇七頁参照)尤も判決に右法条の適用を明示しなくても、その処断刑の決定が同条項を適用した結果であることが窺知されるときは、その適条遺脱を以つて法令違反に問うことができないのみである。(同裁判所第一小法廷昭和二十四年十二月十五日判決、判例集三巻一二号二〇一八頁、及び同裁判所第二小法廷昭和二十五年九月八日判決、判例集四巻九号一六三七頁参照)しかして前記公職選挙法第二百二十一条は懲役若しくは禁こ又は罰金、同法第二百三十九条は禁こ又は罰金といずれも選択刑を規定しているから、その両者の刑の軽重を定めるについては、前示説明のとおり刑法第十条の外に刑法施行法第三条第三項をも適用しなければならない場合に該当する。従つてこれが適用を明示した原判決の擬律は相当であつて、これを以つて擬律錯誤の違法ありということはできない。趣旨は理由がない。